

(小名の事)より(谷の事)翻刻
小名の事
山田 (2/)水田ある地故かく云ふとぞ。
大土肥(2/)ちのよく肥たると又竹藪の内をどいといふにやかく名附たり。
王地 (3/)**権現の社ある内くなり。
杉し原(2/)昔山崎村なる杏□権正といふ郡士あり勇猛の武人にて、
此人此地ニて野猪を組伏たることありま□かく地名となりたる。
藤原(2/)是ハ昔此祠に藤原なると云ち阿りしとなり。
了慶寺 是も昔ハちなり。
延命寺 此も古のち阿りし祠也。
悲大寺 此も古のち也、前件村名祠又善勝寺由来の條に釈すれバ□に田九しぬ。
(谷の事)
猪のし原谷
藤原谷
王地谷
山田谷
悲大寺谷
埜ぎ谷(=しげぎたに/のぎたに)
上ハ丹り谷といふなり。
原字井出あそばされし。
神社部
境八幡 前條西之門ミ地名祠委しく之しぬれば此所ニハ田九
(S/祭神 應仁天皇 神功皇后 姫大神 祭日九月八日)
王子神社 祭神 大巳貴命 (S/稚郎子命)
天満宮 祭神 菅公
恵美寿神社 祭神 事代主命
吉本恵美寿神社(2/)祭神 同所
春日神社 ニッ木□ニアリ 祭神 武甕槌命 斎主命 天津児屋根命 姫大神
(現代訳)
この地域には、六つの主要な社が並び立っていた。
いずれも郷の西側、「前条西の門」に沿う古い祠を中心としている。
- 境八幡宮:古くから田を捧げる「田九(たく)」の地で、
應仁天皇・神功皇后・姫大神を祀る。九月八日に祭礼が行われる。 - 王子神社:大巳貴命(大国主命)を祀り、
稚郎子命を合わせて記す。 - 天満宮:菅原道真公を祀る。学問の神として後年の信仰が強い。
- 恵美寿神社・吉本恵美寿神社:
ともに事代主命を祀り、同所・分祀の関係にある。
漁業・商業繁栄の守り神。 - 春日神社:二木(ふたぎ/にき)と呼ばれる地に鎮座し、
武甕槌命・斎主命・天津児屋根命・姫大神を祀る。
阿波国内の春日社系の典型的構成。
全体として、「八幡・王子・天満・恵美寿・春日」の五系統が
互いに連なる小社群であり、
当郷が古くから信仰と産業を重ねた“神社列”であったことがわかる。
妙見神社 同村宮嶋に坐す
山上大山祇神社 界八幡社内一社
辻名ニ一社 唐戸名一社 吉本ニ一社 火の口に一社
同所に一社 近久名ニ一社 山八手八名ニ一社 長戸ニ一社
高野窪一社 此所にハ弘法太師の由来あり此祠ニ古木の
松の木ニ本あり 立石あり(S/大師由来)を附タル也 一畑ニ一社
横谷名 天神社 山神二座 草野姫神社 横谷一社
辻名ニ一宮 事代主尊 吉本ニ小社宇合十六座
悲大寺鎮守二座 若宮大明神一社
古八幡神社
是ハ今の宮嶋浮島八幡宮の鳶地ニて桑村
児島村学村三界ニて根元此祠ニ阿りし
社なりしグ此祠大岩と云ふ所にて奥六枚敷程の平岩なり
此地ニ阿りし時も霊験炳我なりしグ
今も□何らしなる沫社にて此国ニ隠れなき利
宮の嶋の大宮八幡宮の鳶塚な利
小社の部・現代訳)
妙見神社は同じ宮嶋の地に鎮座している。
山上の大山祇神社は八幡社の境内にあり、そのほか辻名に一社、唐戸名に一社、吉本に一社、火の口に一社がある。
同所にさらに一社、近久名に一社、山八手八名に一社、長戸に一社があり、
高野窪にも一社がある。この地には弘法大師ゆかりの祠があり、
古い松の根元に石碑が立っている。そのそばに「大師由来」と書かれた附札がある。
一畑にも一社がある。
横谷名には天神社と山神の二座があり、草野姫神社もここに鎮座する。
さらに横谷に一社、辻名に一宮があり、事代主尊を祀る。
吉本には小社が多く、合わせて十六座に及ぶ。
悲大寺には鎮守の二座があり、若宮大明神の一社もここに祀られている。
古八幡神社は、今の宮嶋浮島八幡宮のある鳶地の場所にあった。
桑村・児島村・学村の三境に位置し、
その根元はこの祠に由来している。
この祠は大岩と呼ばれる場所にあり、奥行き六枚ほどの平らな岩の上に建てられていた。
この地に祀られていた当時も、霊験はあきらかであった。
今もなおその神威は衰えず、沫社(あわしゃ)としてこの国に名高く、
宮の嶋の大宮八幡宮の鳶塚にあたる。
コメントを残す