トピック的なもの
古文書の翻刻は、一字一画が世界を変える仕事です。
今回、阿波国風土記 第一巻の中盤を進める中で、
「廊(郎)」を一度「宛」と読み違えたことがありました。
その瞬間にあらためて感じたのは、崩し字の形がどれほど似ているかということでした。
翻刻の現場で見えてくる“そっくり文字”たち
- (是)と(其) は崩し方がよく似ていて、筆の入りや払いの角度でようやく見分けられるほどです。
- (村)と(此) も同じく似通っており、とくに「寸」と「止」が連筆になると判別が難しくなります。
- (へ) は折り返し線から一本で現れることがあり、単独の線に見えても意味を持っています。
- (也) は「し」の大きい版のように書かれることがあり、勢いのある筆ではほとんど区別がつきません。
- (清)と(信) は崩しでは見極めが難しく、「青」と「申」の部分がほとんど同じ形になってしまいます。
- (ぃ) は「ハ」や「ニ」として表れる場合もあり、送り仮名や補助音の区別が曖昧になることがあります。
- (祠) の略字が「和」に見えることがあり、とくに神社条では注意が必要です。
- 以前「(男)」と読んでいた文字が、実は「田九ス」──そして最近の確認で「田久」のほうが確実だとわかりました。それが今では(因及)だと判明したばかりです
誤読もまた翻刻の一部
こうした誤読や迷いは、翻刻者にとって失敗ではなく成長の跡です。
同じ字に何度も向き合ううちに、筆者の癖や筆圧、紙の質まで見えてくる。
崩しを読み解くとは、過去の筆の呼吸を感じ取ることなのです。
一字を見誤るたびに、見えなかった何かが見えてくる。
それが、翻刻の本当の喜びです。



翻刻初心者です(笑)誤読やミスの指摘 ご意見大歓迎です