阿波の古社を考える時
式内社だけを追うと見落とす神がある
伊比良咩神
船尽比咩神
埴生女屋神
いずれも
後世には若宮大権現
羽辻明神
田ノ口大明神
上一宮大栗神社などと称され
古い神名は見えにくくなっている
しかし『三代実録』には
これらの神名が授位記事として残る
伊比良咩と船尽比咩は
貞観十四年十一月二十九日に
正六位上から従五位下へ昇った神である
埴生女屋神は
元慶七年十二月二十八日に
従五位下から従五位上へ進められている
ここに見えるのは
式内社の表だけでは拾えない
阿波の国史見在神である
伊比良咩は
旧吉野川下流の藍住に鎮まり
若宮信仰に包まれた女神として残る
船尽比咩は
神山広野の辻に鎮まり
船路と陸路の境を思わせる名を持つ
埴生女屋神は
大栗比売
大宜都比売
天石門別八倉比売へ接続され
阿波の食物女神の古層へ連なる
これらは
阿波を中心国として誇るための神名ではない
海から入り
平野を通り
山へ至る交通と供給の節目に
女神の名が残っていることを示すものである



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