阿波國風土記編輯雑纂 (明治写本)翻刻に挑戦しています 誤読/指摘/お気づきのある方(みんなで翻刻しませんか)

斎王臥淵

筑波大学図書館所蔵『阿波國風土記編輯雑纂』翻刻
同図書館情報提供済

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かむろぎ・かむろみ──伊弉諾・伊弉冉との神名対比をめぐって

本稿は
祝詞に見える
神漏岐
神漏美
という語について
その位置づけを整理するための調査メモである

ここでは
祝詞本文
記紀神話
古語拾遺
後世注釈
古史古伝系資料
を同じ層に置かず
それぞれの資料性を分けて扱う

一、祝詞に見える神漏岐・神漏美

祝詞には

高天原に神留坐す
神漏岐
神漏美
の命以ちて

という句が見える

この句では
神漏岐・神漏美が
神事や祓いの発動根拠となる高天原の神格として置かれている

ただし
この表現を
ただちに特定の一対の神名と見るか
高天原に鎮まる祖神的・皇親神的な神々への尊称と見るかは
本文系統や注釈によって扱いが分かれる

したがって
神漏岐・神漏美を
特定神名として断定する前に
まず祝詞上の定型句として読む必要がある

二、大祓詞における位置

大祓詞にも
高天原に神留坐す
皇親神漏岐
神漏美
の命以ちて
という趣旨の句が見える

ここでも
神漏岐・神漏美は
祓いを発動する権威の起点として置かれる

このため
神漏岐・神漏美は
大祓詞において
個別神というよりも
高天原に坐す根源的・祖神的な神格を総称する語として読む余地がある

ただし
このことは
神漏岐・神漏美が
伊弉諾尊・伊弉冉尊そのものであることを
直接示すものではない

三、伊弉諾・伊弉冉との関係

神漏岐・神漏美を
男神・女神の対として見る場合
伊弉諾尊・伊弉冉尊と結びつけて理解する読みは生じうる

伊弉諾・伊弉冉は
記紀神話において国生み・神生みに関わる双神であり
男神・女神の対として語られるためである

しかし
祝詞本文に
神漏岐・神漏美
とあることだけを根拠に
これを伊弉諾・伊弉冉と同一神であると断定することはできない

ここでは
神漏岐・神漏美を
伊弉諾・伊弉冉に重ねる解釈があり得る
という段階に留める

四、資料層の違い

神漏岐・神漏美については
祝詞系資料
記紀神話
古語拾遺
後世注釈
古史古伝系資料
で扱いが異なる可能性がある

祝詞系資料では
神事や祓いの発動根拠となる高天原の神格として置かれる

記紀神話では
伊弉諾・伊弉冉が国生み・神生みの神として語られる

古語拾遺では
忌部祭祀の系譜や神事職能が重視され
祝詞中の神漏岐・神漏美と
伊弉諾・伊弉冉との関係を直接整理するものではない

一方
古史古伝系資料では
神漏岐・神漏美を
伊弉諾・伊弉冉と同体視したり
造化神的に扱ったりする解釈が見える場合がある

ただし
これらは祝詞本文の成立や古代祭祀の直接証拠としてではなく
後世の神名解釈
または別系統の神話構成として
層を分けて扱う必要がある

五、語について

神漏岐・神漏美の表記には
漏
岐
美
などの字が用いられる

しかし
これらの漢字表記だけから
語源を直ちに決めることはできない

神漏岐の
岐
神漏美の
美
を
男神・女神の対として読むことは可能である

また
神ろぎ
神ろみ
のように
神霊的・祖神的な尊称として読む余地もある

一方で
神漏を
神籠
すなわち神が籠もる意と直結させる場合には
別途出典と語義の検討が必要である

したがって本稿では
神漏岐・神漏美を
高天原に鎮まる祖神的・皇親神的な神格を指す祝詞語
として仮に扱い
伊弉諾・伊弉冉との同一視は
後世的解釈または一つの読みの可能性として位置づける

六、現段階で言えること

現段階で言えるのは
次の点である

第一に
祝詞には
神漏岐・神漏美という語が見えること

第二に
その語は
神事や祓いの発動根拠となる高天原の神格として置かれていること

第三に
男神・女神の対として
伊弉諾・伊弉冉に重ねて読む解釈はあり得ること

第四に
しかし祝詞本文だけから
神漏岐・神漏美を伊弉諾・伊弉冉そのものと断定することはできないこと

第五に
古史古伝系資料に見える同体視や造化神化は
祝詞本文とは資料層を分けて扱う必要があること

以上である

まとめ

神漏岐・神漏美は
祝詞において
高天原に鎮まる祖神的・皇親神的な神格として置かれる重要な語である

その語を
伊弉諾・伊弉冉と結びつけて読む余地はある

しかし
それを祝詞本文そのものの確定的意味として扱うことは避けたい

今後は
祝詞本文の系統
大祓詞の諸本
記紀神話
古語拾遺
後世注釈
古史古伝系資料
を分けて確認し
神漏岐・神漏美という語が
どの段階で
どの神格と結びつけられてきたのかを
慎重に整理する必要がある

翻刻初心者です(笑)誤読やミスの指摘 ご意見大歓迎です